矢部久美子のイギリス福祉情報 No.80

日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。

*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。

<228>児童ソーシャルワーカーの求人・研修に7300万ポンドを投資

 エド・ボールズ大臣(児童・学校・家族省)が、イングランドを児童・青少年の成長にとって世界最高の場とすることを目的とした『児童サービス10年プラン』Children’s Plan を発表したのは2007年12月である。その実施に向けた動きはホームページで閲覧可能。その一環で、このほど同大臣は児童サービス労働力計画 Building Brighter Futures: next steps for the Children’s workforce を各自治体の児童サービス部長を集めた会議の場で発表した。www.dcsf.gov.uk/publications/childrensplan/implement.shtml
 同計画は今後3年間でおよそ4億ポンドを労働力開発に投資するとしている。ここでいう児童サービス労働力とは、教育、福祉、医療などの広い分野にわたり児童・青少年と働くすべての人が含まれている。そのうちソーシャルワーカーの研修・求人などに使われる予定であるのは7300万ポンドだという。投資の内容は、他の専門職従事者を対象にした現場教育重点の短期コースの試験プロジェクトや多様な専門職から児童ソーシャルワークへの転職を促すキャンペーン、教育研修の改善。それから2008年9月、新卒1000人に1年間の特別支援制度を適用する試験プロジェクトを行うなどである。
 また同省は、労働組合や事業者や関係機関などから募った専門家集団とともに、児童サービス従事者が利用者にあった個別的なサービスを組み立て関連機関とよく連携し最高のサービスを提供できるよう長期戦略を共同して作成し、秋には発表の予定である。

<229> 知的障害連合が諮問委員会設置。グリーンペーパーへの影響を狙う

 知的障害連合www.learningdisabilitycoalition.org.ukは10の知的障害関連組織の連合で、政府の知的障害者政策に影響を与え、知的障害者が一般の人と同じく豊かな人生の選択と機会を持てるようにするため活動している。
 この秋にはイングランドの保健省が成人社会サービスの新政策(グリーンペーパー)を発表予定であるが、それが知的障害者に望ましい内容となるよう働きかけるため、広範囲の有識者を集めた諮問委員会を設けた。同連盟の委員長、そしてメンキャップ(知的障害者団体)の所長であるJ.ウィリアムさんは「この数ヶ月が勝負、知的障害者がみな質の良いサービスを受けられるよう、政府が知的障害者政策に十分な財源を投じることを訴えていきたい」と述べている。

<230> ソーシャルワーカーが名称独占になって3年、初の登録更新

 ソーシャルワーカーという名称を使って仕事をする人は、みなソーシャルケア総合協議会www.gscc.org.ukに登録し3年おきに更新することになって3年になる。この4月1日までに、登録ソーシャルワーカー4万人は初めての更新申請手続きをしなければならなかった。手続きに当たっては、登録後に研修学習した最低90時間または15日の内容(Post-Registration Training and Learning)証明を提出しなければならない。同協議会のPRTLガイドには調査やコース参加、観察実習など幅広い項目が含まれており、記録をつけていれば誰もが十分な時間を提出できるはずという。
 しかし3月5日のコミュニティケアwww.communitycare.co.ukの記事 Social workers urged to re-register with the GSCC によれば、その段階では手続きを申請したのは1万9600人。これらの人のPRTL時間は90時間をはるかに上まわっているというが、同誌の2月に実施した独自の調査ではPRTLが20時間以下の人が19%もいた。
 また同記事によると、英国ソーシャルワーカー協会などが、このPRTLについては厳正さが足りないと批判している。現状の自己審査をやめ、他の人による審査を勧めるむきも。その一方、むしろ学習や研修の必要性を雇用機関が認めよい環境を作っていくことが大事だという意見もあるという。
 ソーシャルケア総合協議会の所長、マイク・ワードルさんが、やはりコミュニティ・ケアに「ソーシャルワーカー名称独占3年記念」Three-year anniversary of protection of title for social workers 01/04/2008 という記事を寄せている。このなかでPRTLの見直しを進めており、必要な制度改革を行っていくと述べている。

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