日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。
*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。
政府は「未来の家」という計画書で2020年までに300万家屋を建築すると発表しているが、今回の高齢社会住宅戦略※はそれを基に「生涯住める住宅と近隣地域」をテーマに展開している。家庭数はこれからも大幅な増大が予想されており、その増加分の半分ほどは高齢者家庭という見込み。2026年には高齢者家庭は現在よりも240万戸増えるという。しかも2041年には障害のある高齢者数が2倍になると予想されている。※Lifetime Homes, Lifetime Neighbourhoods: A National Strategy for Housing in an Ageing Society www.communities.gov.uk/publications/housing/lifetimehomesneighbourhoods 同戦略の基本にあるのは、良い住宅戦略はケアにかかる費用を抑制し、最善の援助とケアを提供していくために必須であるという考え方だ。住宅政策を怠っていれば、たとえば転倒予防などができないまま、介護費用が2041年には今の3倍以上になると試算されている。
同戦略の主なアクションプランは次の様。●全国的な住宅助言情報サービスの確立とこれにリンクした各地での住宅情報サービスの強化●住宅の『緊急』修理改造サービス導入●障害者設備助成制度の改善(助成限度額の引き上げや資力調査の見直しなど)●既存の公的住宅改善プログラムの継続●2011年より住宅協会などは障害者住宅基準を遵守して住宅建設(民間は任意)●高齢社会を考慮した地方・地域計画(住宅・地域局を設け、高齢者に優しいデザインや質を優先した地域計画が立案されるよう保証する)●住宅・医療・福祉の関係を強化し、三者が連結したアセスメント、サービス供給・委託に向けて努力する。
デイリー・メール紙www.dailymail.co.uk の記事、Care home bills for the elderly could double to £1,000 a week over the next 20 yearsによると50歳以上人口向けの各種サービス事業を行っているサガSAGAが「現在、平均週540ポンドのケアホーム入居費が、20年後には1074ポンドに上がる」という予測を発表した。入居費用は毎年、物価上昇率を超えて上がり続けているという。高齢者のケアホームでの典型的な滞在年数は4年間といわれ、1人の入居者の総経費は22万3,476ポンドになる計算だ。この推計をサガのために行ったのは医療福祉業界のデータ収集・分析で最もよく知られる会社www.laingbuisson.co.ukである。基本的に入居費用は自己負担で、2万1,500ポンド相当以上の家屋や貯蓄がある人は看護ケア部分を除く(スコットランドではパーソナルケア部分も公的負担)入居費用を全額自己負担しなければならない。資産が前述額以下になって初めて自治体のアセスメントや資力調査を経てそれに応じて助成を受けることができる。
2008年以内に政府は成人のケアについての新しい政策を発表する予定で、その中でケア費用の負担についても言及されることになっている。公平で将来にわたって維持可能な負担のあり方が示されることが期待されている。
児童福祉労働力開発協議会www.cwdcouncil.org.ukhttp://www.cwdc.org.uk/は昨年9月にソーシャル・ワーク・リモデリング・プロジェクト(18件)の実施を発表し参加自治体を募っていた。2008年2月20日、9つの自治体が発表された。ソーシャルワークの新しい方法論を模索してバーミンガムなどイングランドの9つの自治体で試験プロジェクトが行われる。各プロジェクトはソーシャルワーカーが児童とその家族のために費やす時間を増やしクリエイティブな働き方ができるようにして、成果がよりあがるようにすることを目的にしている。具体的には各自治体が「保護にいたるリスクがある場合の早期介入、ソーシャルワーカーが十分な情報を得た上で状況の判断ができるようよく支援する、ソーシャルワーカーが児童と青少年のニーズを評価する機会を増やす」といったことを実施するために従来の事業を再構成する。例えば、バーミンガムではアセスメントの初期段階で児童とソーシャルーカーの接触時間を増やす。またウィラルではアセスメント・チームや多専門職チームを設置し、実際業務の見直しを行う。ソーシャル・ワーク・リモデリング・プロジェクトは2011年まで続けられる予定で、2008年10月に開催される最初の会議ではプロジェクトの成果が話し合われる。