矢部久美子のイギリス福祉情報 No.77

日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。

*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。

<119> 欧州連合共通のヨーロッパ・ケア・ライセンス

 ヨーロッパでケアに従事するものが基本的に取得すべき資格として想定された、ヨーロッパ・ケア・ライセンス(European Care licence)が開発されつつある。ECL試験プロジェクトがECのレオナルド・ダ・ビンチ助成金から助成を受けて実施されており、2008年には終了の予定という。
 ヨーロッパの多くの国が介護職従事者不足に悩み、外国人の雇用を増やすことになっているが、介護職従事者の大勢が無資格という状況だ。また介護職につくための基本レベルがどの程度でなければならないというヨーロッパ共通の理解も存在していない。他の専門職ではありえないことである。ECLプロジェクトはそのギャップをうめ、各国で通用するような資格を開発していくことをめざしている。資格取得のコースは現場研修をとおし、短期コースまたは長期コースの一部として実施することになるという。同プロジェクトのイギリスのパートナーはソーシャル・ケア・エクセレンス研究所www.scie.org.ukである。

<220> 地域ケアの直接現金給付制度利用者が前年度比28%増に

 2006年度のイングランドの地域ケア統計要約が発表されている(2007年12月19日)。www.ic.nhs.uk/statistics 同年度、新規の問い合わせはおよそ200万件あったと見積もられ、その数は前年度とほぼ同じである。そのうちアセスメントが実施されたのは65万件でこれもほぼ前年度並み。同年度にサービスを受けたクライエントは前年度比1%増加の総数177万人である。直接現金給付制度(direct payments)の成人利用者は4万8千人で、これでも前年度比28%増になった。
 手続きにかかる時間を見てもわずかに改善している。新規の65歳以上クライエントに対しては、連絡を受けてから2日以内に31%、2週間以内が62%、4週間以内が79%の割合でアセスメントを終了している。前年度は4週間以内に終了したのは75%だった。
 家族など介護者は35万3千人がアセスメントまたは再アセスメントを受けた。そのうち89%が介護者としてサービスを受けた。やはり前年度比4%の増である。なお春には自治体別の統計が含まれたより詳しいリポートが発表される。

<221> 個別予算試験プログラム終了、続くケア改革

 2年ほど前に保健省、地域地方自治省、労働年金省、障害局がパートナーになり、13自治体(イングランド)で開始された「個別予算 Individual budgets 試験プログラム」www.individualbudgets.csip.org.uk/index.jspが12月に終了した。「個別予算」は地域ケアのサービス利用者が自分の望むような生活を最大限に達成できるようにと立案されたものである。これが具体化し実施されれば、サービス利用者はより包括的な個別予算をもつことで、これまでとは異なり生活全般により広い選択肢とコントロールが可能になるはずである。試験プログラムの内容については、すでに個別予算評価ネットワークが、プログラム利用者130人や各自治体のプログラム担当者にインタビューを行った。その結果が春までにリポートにまとめられる。また個別予算ツール・キットも制作される予定である。
 一方、2007年12月10日には 各大臣、地方自治体、NHS(国営医療制度機関)やソーシャル・ケアの専門職、関連規制団体などによる協約「人々が最優先」Putting people first: a shared vision and commitment to the transformationof adult carewww.dh.gov.ukが発表されている。同協約はケア・サービスを大きく変えることになるというが、そのビジョンの1つがサービス利用者や家族など介護者に最大の選択とコントロールを与えるというもので、それは個別予算の確実な推進力になるだろう。同日、保健省大臣は各自治体に今後3年間で5億2千万ポンドをソーシャル・ケア改革助成金として配当するとも述べている。

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