日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。
*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。
2007年11月1日付けの週刊誌コミュニティ・ケアは6月に引き続き、サービスへのアクセスについての調査を行い、その内容を「サービスを制限するようプレッシャーを受けている職員たち」Staff pressured to deny services という記事にまとめている。www.communitycare.co.uk
編集者のブロード氏は巻頭のコメントで「6月に行った調査で、76%の自治体が中低度または重度のニーズのある人に限ってサービスを提供しているという結果がでていた。今回の調査では現場のソーシャルワーカーがサービスへのアクセスを厳しくするようますます強いプレッシャーを受けていることがはっきりした。財政事情が明らかに毎日の仕事を支配している」と述べている。調査からわりだされた主な結果は次の4点。●調査対象のソーシャルワーカーの67%の働く自治体が近年、資格用件を変更した。●調査対象のソーシャルワーカーの29%が過去数年に上司からサービス受給の資格要件を満たす人を少なくするようプレッシャーを受けたことがある。●調査対象のソーシャルワーカーの51%が過去数年にサービス利用者をアセスメントしなおして、サービスをはずすようプレッシャーを受けたことがある。●調査対象のソーシャルワーカーの34%がニーズ・アセスメントの結果を実際よりも深刻なものとして評価しクライエントがサービスを受けられるようにすることも厭わないと応えている。
サービス利用者のおかれた厳しい状況はもとより、現場実践者の苦しい胸のうちが伝わってくる調査報告である。
2007年10月30日、地方自治そしてヘルスへの住民参加法 The Local Government and Public Involvement in Health Act が成立した。
保健省(イングランド)のニュース欄 Keen welcomes stronger links between communities and health serviceswww.dh.gov.ukは同法が地方自治体協会などから大歓迎を受けていると自賛している。
同法により、2008年4月から、各地の病院などに設けられていた「患者住民参加フォーラム」とその全国的なコーディネート委員会が廃止され、保健医療とソーシャル・ケアのサービス提供者両者に影響力をもち、説明責任を求めることのできる「ローカル参加ネットワーク」 Local involvement network(LINK)が設けられる。LINKs(各自治体ごとに設けられ150できる)の主な内容は次の3点。●現存の活動家だけでなく、これまであまり意見を出していない一般の住民も含めたすべての地域住民を代表する。●懸念すべき事柄を調査する権限を持ち、情報を請求し、現場に入りサービスを検討できる。そして報告書の制作や勧告も行う。地方議員に申告する。●地域住民がケアの専門家たちと交流できる場所を提供する。
また同法は各地の保健医療に責任をもつプライマリ・ケア・トラストが
どのような場合に住民に協議すべきかをはっきりさせると同時に、患者や住民からサービスについて出された意見についてどのようなアクションをとったかを説明する新たな義務を導入した。さらにプライマリ・ケア・トラストは各自治体と共同で地元のニーズアセスメントを実施することも義務付けられた。同法の狙いが当たれば、保健医療制度の地元での説明責任が強化され、保健医療・福祉共同の路線もさらに強まることになる。
児童・学校・家庭省www.dfes.gov.ukは2007年11月7日、3歳と4歳のすべての児童が保育園を無料で毎週12.5時間から15時間、希望しだいで利用できるよう援助すると発表した。すでに20の自治体が15時間無料保育を実施しているが、2008年度9月からさらに14自治体が開始し、2010年にはすべての自治体が実施することになるという。