矢部久美子のイギリス福祉情報 No.69

日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。

*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。

<194> サービス利用者が自己のケアを裁量。満足度、経済効果もアップ

 過去10年で知的障害者サービスへの支出は実質上2倍以上に増えたという。この伸びは社会サービス全体の増加をはるかに上まわっている。その理由は利用者数や重度ニーズの増加、そして依然として続く入所施設の不必要な使用にあるとみられている。
 この4月、ケアサービス改善パートナーシップCSIP(保健省のケアサービス局の一部)www.csip.org.ukが、サービス利用者に自己のケアの裁量を任せることでコスト削減をはかり、エンパワメントにもつなげるという計画書 Getting to Grips with the Money を発表した。
 CSIPは2006年に、知的障害者サービスの急速な費用増加に悩む自治体を支援するため、同名の Getting to Grips with the Money (お金を理解する、つまり支出の管理)という支出抑制のイニシアチヴを始めた。今回の発表はそれのアップデイトということで、従来のフォーカスを変え、障害者が自分で受ける援助のあり方を決められるようシステムを変えていこうという「イン・コントロール事業」www.in-control.org.ukとの協働により、広義の経済価値を求めた事業を行っていくという。なお同計画は他のクライエント・グループもカバーすることになる。
 過去3年で、すでにイングランドの自治体(150)のうち90自治体がイン・コントロール事業に参加し、サービス利用者またはその家族はニーズを自己評価しそれぞれの予算を使ってサービスを指示、管理した。これまでの事業評価によると、利用者満足度、生活の質が非常に高くなり、かかる費用も従来の方法と同じかそれ以下という経済効果も出ている。

<195> 「ケア制度、このままでは将来の存続が危うい」と言うケア連合

 ソーシャル・ケアの制度が現状のままでは将来的に存続不可能と懸念するチャリティ組織(エイジ・コンサーンやヘルプ・ジ・エイジドなど)や財団(キングス・ファンドとジョゼフ・ロウントリー財団)、15団体が集まってケア連合www.caringchoices.org.ukを結成した。
 ホームページでは日本やドイツを例にとり、どのように制度を改革すべきか、多くの人に議論に参加するよう呼びかけている。また各地で協議のためのイベントを催すという。
 これまでも何度かこうした試みは行われ政府にケア制度の見直しを迫ってきたが、抜本的な解決にはいたっていない。秋には政府の包括的支出見直しの発表が予定されている。それには2008−2011年の支出限度額が示されるが、ソーシャル・ケアの実質増加は見込めないという予想だ。

<196> ソーシャルケア監査委員会に新しい「強制執行チーム」

 悪質なケア・サービスを提供する事業者に対して速やかに厳しく対処するため、ソーシャルケア監査委員会www.csci.org.uk(イングランド)は7箇所の地方事務所にそれぞれ強制執行チームを設けると発表した。
 New enforcement teams to tackle poor care providers(2007年4月12日)
 各チームのリーダーはレギュレーション(規則、取り締まり)・マネジャーと呼ばれる。特別監査官や補助員にサポートされ、サービス改善要求、改善計画提出要求、時限付き改善要求、強制執行(正式注意通知や登録取り消しなど)というステップを踏む。チームは同委員会の弁護士と共同し、より迅速に適正に、かつ一貫性のある活動をめざすことになる。
 これまでは強制執行の手続きにかかる通知の発行に手間や時間がかかりすぎる、時には明確性を欠くなど、サービス利用者の安全や生活の質を守るのに十分といえない場合があったという。同委員会の理事長D.プラット氏は「虚弱成人の権利と福利、安全を守る法律をどうしたら児童のそれと同じレベルまで上げることができるか、政府と検討していく」と固い決意だ。また「重大な件で規則が破られたり安全が危ういような場合であっても緊急手続きや閉鎖の要件にあわない状況があるので、そのようなケースで起訴が可能なような権限の追加を求めていく」とも述べている。

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