日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。
*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。
障害者権利委員www.drc-gb.orgが新しい将来計画 Creating an alternative futurewww.disabilityagenda.org
を発表している。
アジェンダの主要項目は平等と人権文化の促進、児童の貧困撲滅、学習・技能習得をとおして人生の機会を増やす、貧困撲滅と雇用機会の拡大、民主的参加と活発な市民を増やす、将来に機能するソーシャルケア制度開発など。これと平行して政府の担当大臣や一般参加のディベイトがウェブサイトで進行している。
同委員会が2000年に設けられてから7年が経過した。この10月には年齢、性差、人種、宗教などの分野にわたる総合的な新平等人権委員会がその事業を引き継ぎ、同委員会は終結する。この7年で非差別や平等の権利、就労、住環境やバリア解消などの多くの局面で改善がみられたが、障害者の社会経済的疎外の根絶にはほど遠い。同委員会はこのアジェンダが関係当局に採用されるよう、そして新委員会に引き継いでもらおうと最後の活動を展開している。
患者協会www.patients-association.org.ukが「高齢者の痛み−隠された問題」 Pain in older people - A hidden problem というリポートを国会に提出した。ナーシングホームの入居者(高齢者)を対象にした慢性的な痛みについての調査は初めてのことで、憂慮すべき実態が明らかになっている。
調査は24施設の77人を対象に質問事項をもとにした1対1のインタビュー形式。2006年9月から12月の間に行われた。
この対象者の74%が継続的な痛みを感じているという。しかも8%は非常に強い痛みだと表現している。痛みについてケアワーカーや医師や看護士に質問されたことがある人は53%、痛みの緩和について医師や看護士と話したことのある人は15%にすぎなかった。痛みのために活動が制限されている人は90%、うつ状態の人は38%にもなる。
患者協会は、政府が早急に対処し、家庭医による定期的な与薬の見直し、施設職員の痛み緩和の積極的処置などを促すよう求めた。
成人が精神的能力を一時的に欠くとき、または生来的に欠く状態にある場合、代わって物事の判断をどう行うかなどに関して幅広い分野をカバーしたメンタル・キャパシティ法2005。この4月、施行の第一段階として、独立メンタル・キャパシティ・アドボケイト・サービスがイングランドで開始した。ウエールズでの施行は秋以降になる。www.dca.gov.uk/menincap/legis.htm
同サービスは略してImcas。自治体や国営医療制度のNHS機関は、精神的能力に欠き家族や友人のない人が居住場所や治療など重要事項の判断を迫られるような状況におかれた場合、同制度によるアドボケイトを任命し、その意見を配慮しなければならない。同法のその他の部分はやはり秋に本格施行される予定。
ケアーサービスの質を保つためにはサービスを監視・規制する仕組みが絶対に必要だ。ここ10年、その仕組みを構築する試行錯誤が続けられきたが、また組織編制があった。2007年4月より、ソーシャルケア監査委員会www.csci.org.ukが行ってきた児童ケアサービスなどの監査を、教育基準事務局www.ofsted.gov.ukが引き継ぐことになった。これまで、前述2つの組織から監査を受けていた寄宿学校などは、同事務局による単一の監査ですむことになり煩雑な事務の反復を避けることができる。
同事務局の新しい正式名称は the office for Standards in Education, Children’s services and skills で、児童ケアサービスに加えて、成人の学習、職業訓練コースなども管轄することになり、業務の対象人口は巨大化した。ただ今後もOfstedという略称は継続使用という。