日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。
*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。
2007年4月より、同性愛カップルも養子縁組の斡旋を専門とする組織に縁組を申し込む際の平等な権利が認められる。これによって組織は同性愛者カップルを平等に扱わなければならなくなるわけだが、養子縁組事業を行うカソリック教会は信仰に反する行いをすることになるとして激しく反発し、政府との攻防がメディアに連日取り上げられた。結局、政府はカソリック教会の養子縁組機関には2008年までという実施の延期を認めるというところでけりをつけた。またこの経過期間中は他の機関に照会することが義務付けられ、2008年末までに非差別を実施しない場合はすべての公的補助を失うことになるという。Catholic agencies given deadline to comply on same-sex adoptions Jan. 30, 2007 http://society.guardian.co.uk
2007年1月中旬、知的障害者の入所ケアをめぐるスキャンダルがまた報道された。昨年の夏に深刻な虐待が明らかになったコーンウォール・パートナーシップNHSトラスト(西部イングランド)に続くもので、知的障害者ケアの質の維持向上はまだこれからということを思い知らされる出来事である。
サットン・アンド・マートン・プライマリケア・トラスト(ロンドン)の5病院の悪質な実践をリポートしたヘルスケア委員会(ヘルスケアサービスを監視するイングランドの機関)www.healthcarecommission.org.ukは、そのケアの内容を旧世紀の遺物のようだと非難した。
コーンウォールの経済的、身体的など様々な虐待があったケースほど深刻ではないとしても、依存の促し、貧しげな内装、厳しく決められた食事時間、活動の制限、プライバシーと尊厳の剥奪、不適当な抑制など現在には受け入れがたい水準のケアが行われていた。職員の研修が不適切で、離職率や病欠率も高い。そのような中で、昨年夏、1人の職員は入居者への性的虐待で6年の実刑を受けていたという。
ヘルスケア委員会は先より監査の試験的プログラムを実施していたが、2007年1月10日、成人そして思春期の知的障害者にヘルスケアを提供しているNHS(国営医療サービス)および民間のサービス提供者を対象に全国的監査を実施していくことを発表した。
人種平等委員会www.cre.gov.ukは2007年2月6日、保健省が人種平等を促進する義務(人種平等インパクト評価の実施など)を守っていない疑いがあることから正式な調査を行うと表明した。委員会のホームページには、保健省に人種平等計画を怠っていることを注意した文書に始まり、2005年4月から2007年2月までに数々の改善を促す行動をとってきた経過が記されている。
2006年8月30日のコミュニティケアwww.communitycare.co.ukには Department of health’s record on race ‘ probably Whitehall’s worst’「保健省は人種平等に関して他の省と比べておそらく最悪」という記事も掲載されていた。なぜ保健省が? という疑問が浮かぶ。
英国の高齢者福祉に関心のある人、研究者たちに朗報だ。NPOエイジコンサーンwww.ace.org.ukがこれまで有料だった「インフォメーション速報」を電子化して無料配信することにした。新情報誌名は「エイジ・アジェンダ速報」で、ホームページの Age Agenda Bulletin subscription でサインアップするだけで毎月、高齢者関連の多様なニュースを配信してもらえる。