日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。
*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。
2006年10月1日、雇用に関する年齢差別禁止の法律 the Employment Equality (Age) Regulations 2006 が施行された。BBCのホームページが分かりやすいガイドをつくっている。 Quick guide: Age discrimination http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/5378876.stm
雇用者は被用者(65歳未満)を、若すぎる、あるいは高齢すぎるというふうに年齢を理由に解雇することはできなくなった。研修の機会なども年齢を理由に差別することなく、平等に与えなければならない。
65歳以上はこの対象ではないが、65歳を過ぎても雇用を継続するよう雇用者に求める権利は与えられた。一方、雇用者は被雇用者に退職を求める場合は6ヶ月前に通知する義務が課された。
求人にあたっては、何歳以上または何歳以下などと年齢を特定することも、エネルギッシュとか特定の年齢を想像させるような言い回しも認められない。これまで45歳、50歳という年齢を超えると、就職が困難になるとはよく聞く話だった。職場で最もよく見られる差別である「年齢差別」が実際になくなるまでには時間がかかるだろう。裁判に持ち込まれるケースが増えるのではとも予測されている。
ロンドン市長のケン・リビングストン氏が初の高齢者対策計画(50歳以上) Valuing Older People www.london.gov.uk/mayor/strategies/older_people/index.jspを発表した。ロンドン人口の16%、約120万人が60歳以上。同戦略が目指すのは、高齢者に関する社会のステレオタイプな見方を変え、高齢者が健康で、活発に、自立した生活がおくれるよう、十分な支援を行っていく仕組みを作ることだ。
優先課題にあげられているテーマは、次の市長の言葉にもあるように偏見の是正と高齢者による社会貢献の促進。「高齢者への偏見を正し、社会経済への貢献を適切に評価すべきだ。11%の高齢者は今も仕事に従事している。また高齢者は5億ポンドに値する無料ケアを孫たちに対して行っている。60歳以上の20万人はボランティア活動に参加している」(リビングストン氏)それから年金と所得、コミュニティサービス、保健福祉の向上である。ただ、具体的な行動計画は示されておらず、国の事業である「ケアサービス改善パートナーシップ」の一部であるロンドン開発センターwww.csip.org.ukと協力して検討していくというコメントがでているだけのようだ。
保健担当大臣www.dh.gov.uk(イングランド)がガン患者のためのNPO、マリィ・キュリィ・カンサー・ケアwww.mariecurie.org.uk
の講習会で、高齢者のためのホスピスの環境改善に5000万ポンドを助成すると発表した。これにより、今後2年間でより良いホスピス・サービスのための設備投資、改築、庭などの整備が進められることになった。
1000万ポンドはマリィ・キュリィ・カンサー・ケアに直接助成され、あとの4000万ポンドは、イングランドの各ホスピスが提出する投資計画の内容によって助成先が決められる。なおこの配分の手続きは保健省の「ケアにおける尊厳」Dignity in Careイニシアチブが扱うという。ちなみに同イニシアチブは、ケアサービスにおける尊厳についてオンラインでアンケート調査を継続して行い、その10週間分の内容 Dignity in Care ‘Public Survey’ October 2006を報告している。
自治体協会(イングランドの自治体、ウエールズ自治体協会が会員)www.lga.gov.ukが17回目のソーシャルケア労働力調査(イングランドの自治体が対象)の結果 Local Authority Social Care Workforce Survey 2005 をまとめている。
www.lga.gov.uk/Briefing.asp?lsection=59&id=sxa579-A783CEF3&ccat=1169
おおまかにいうと、研修や給与への投資が増えているにもかかわらず、ソーシャルワーカーの求人・維持は困難な状況が続いている。とくに児童福祉の求人が難しい。その要因として、適切な人材不足や給与条件とともに、仕事の性質そのものが上げられている。ただし、全体としては希望がなくはない。移動率や欠員率が減るなど改善の傾向がいくらか見られた。