日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。
*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。
高齢者のためのNPO、ヘルプ・ジ・エイジドwww.helptheaged.org.ukが、住宅事情の改善をうったえて「高齢者に住宅の選択肢を」Housing Choice for Older People(ホームページに掲載)というリポートを出した。
近年、高齢者の住宅事情にはいくらかの改善がみられるものの、まだまだかなりの数の高齢者が修繕がなされず寒く湿気の多い老朽化した住宅に住んでいる。とくに障害者や低収入で持ち家の人、それから民間住宅(家主が良心的でないため)の賃貸者がもっともそのリスクが高いという。
また改築をすれば在宅を続ける可能性があっても、そのための資金援助が十分でなく、結局、選択肢が狭められている。
いざケア施設入居を考えようとなると、昨今の施設現象傾向が選択の幅を狭くしている。ケア付き住宅のような中間施設の開発も進められているが十分とはいえない。
同リポートは広域圏の当局、自治体がそれぞれ高齢者の住宅ニーズを把握する戦略をたてるよう呼びかけている。
週刊誌コミュニティケアwww.communitycare.co.ukによると、政策文書 Valuing People(2001年3月発表)www.dh.gov.ukで掲げられた、知的障害者用の長期滞在型大規模病院(long-stay hospital)を閉鎖するという目標が2度にわたって実現できなかった。最初の目標が2004年3月。それが延期になった2006年3月にもやはり達成できず、150人が5病院に残っているという。
こうした事態を憂慮する知的障害者のケアに関わる専門家たちは、先にスキャンダルとなった知的障害者虐待事件(本連載164参照)を機に、新たに事業計画やサービス基準を明確にした知的障害者の「全国サービスフレームワーク」 National Service Framework を作るよう政府に求め、コンサルテーション[DOC]www.choiceforum.org.uk/nsfpld.docを実施している。高齢者や児童、また心疾患などのNSFはすでに製作されている。
また、知的障害者のためのNPOメンキャップwww.mencap.org.ukは353家族介護者にアンケートした結果、3割以上の家族が自治体社会サービス部の財政難のため、短期入所サービスの削減にあっていることがわかったという。この報告書 Breaking Point - families still need a break (ホームページに掲載)の中で、メンキャップは最低限の短期入所サービスを保障するよう政府に求めている。
ソーシャルエクスクルージョン(社会的疎外)担当大臣 www.socialexclusionunit.gov.ukは社会的に最も阻害された人たちの処問題を解決し、人生のよりよい機会を持てるようにするための行動計画 Reaching Out : Action Plan on Social Exclusion を発表した(2006・09・11)。
www.cabinetoffice.gov.uk/social_exclusion_task_force/reaching_out/
この対象グループには自治体の保護を受けている児童、10代の母親、精神病患者、様々な問題を抱えた家族などが含まれている。こうした社会的に阻害されたグループの存在は社会正義に反するばかりでなく、社会的なコストをはなはだしくあげることになっている。なお英国はヨーロッパで一番10代で妊娠する女性が多く、有効な対策が求められている。
同行動計画の基本原理としては、より正確な問題把握と早期介入、適切なアプローチの開発普及、多機関の協働体制確立、援助相手と継続した強い関係を築いた専門職者が個別にデザインした支援を行う、などがあげられている。具体的な計画としては、出産前から児童が2歳までのペアレントを支援する10件のプロジェクト(保健職主導)を立ち上げる。10代妊娠対策戦略の見直しと状況の悪い地域にフォーカスして対策を行う。児童期の精神や行動の異常に多様な取り組みをテストする、などである。
同行動計画の進行状況報告書は2007年夏に発表される予定だ。