矢部久美子のイギリス福祉情報 No.58

日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。

*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。

<159> ドメスティックバイオレンスに苦しむ児童への援助

 地方自治体協会(イングランド・ウエールズ)が、各自治体の児童福祉責任者に向けたガイダンス「ドメスティックバイオレンスに影響を受ける青少年のためのサービス」Vision for services for children and young people affected by domestic violence-guidance to local commissioners of children’s serviceswww.lga.gov.ukを作成した。
 ドメスティックバイオレンスの対象になっているのはほとんどが女性、大半が16歳から35歳であり、子供のある場合が少なくない。児童法2004年の施行によって、ドメスティックバイオレンスの影響を受ける児童への責任は自治体の児童福祉責任者とローカル児童保護委員会にあることが明確になった。
 しかし現状では、各地で対応がばらばらで、ドメスティックバイオレンスに苦しむ児童は、安全、健康、経済、教育、情緒的発達などいろいろな面で困難な生活を送っているのに、必要な援助を受けていないことが多いという。
 同ガイダンスはドメスティックバイオレンスは児童福祉の問題であり、蔓延した問題であるという認識に立ち、児童の様々なニーズを明らかにし、不足のサービスをつきとめてサービス計画に組み込むようにする道具を提供している。なお、2005年1月より、「児童への危害」の法的定義に他の人間(特に親)が身体的虐待を受けている環境におかれそれを目撃せざるを得ないというような状況も入ることとなった。

<160> イングランドの最新コミュニティケア統計

 国立統計局とヘルス・ソーシャルケア情報センターがコミュニティケア統計2004−5を発表している。Community care statistics 2004-5: referrals, assessments and packages of care for adults, England: National Report and CSSR tables www.ic.nhs.uk/pubs/commcare05adultengrepcssr
 同年度中に新クライエントから受けた連絡は約200万で前年度の2%減。その結果、アセスメントを受けたクライエントは約64万9千人で前年度より1%減。これらのクライエントで65歳以上の場合、26%が最初の連絡から2日以内でアセスメントを完了したが、70%以上は4週間以内での完了。保健省の目標はすべてのケースが4週間以内で完了することだ。これらの高齢者クライエントの74%がアセスメント完了後2週間以内にケアパッケイジのすべてのサービスを受けている。
 サービス利用者の総数は172万件と推計されている。ケースレビューの実施は109万件で、前年度の6%増。在宅でサービスを受けている人は146万人で、サービスを受けている全体の85%。18以上成人でダイレクトペイメントを受けているのは、2万4千5百人で、前年度の62%増になっている。
 介護者としてのニーズ・アセスメントを受けた人は19万4千人。そのうち74%がサービスを受けた。ただし、その55%は情報提供のみであった。

<161> GSCCによる登録ソーシャルワーカーへの研修ガイド

 イングランドのソーシャルケア総合協議会www.gscc.org.ukが、登録ソーシャルワーカーに義務付けられている研修(15日間または90時間)の実施のあり方について新しいガイダンスPost Registration Training and Learning (PRTL)Requirement for registered social workersを出した。ガイダンスそのものは強制力のあるものではなく、よい実践を促すことを目的にしている。
 登録期間の3年のうちに決められた時間(上記)の研修を行うなどおおまかな枠組みはあるが、あとはそれにそって自分で選び、これだけ研修したという証拠を記録にして残す。それが登録更新の如何にかかわる。
 ガイダンスはどのようにPRTLを組んだら良いかについて指針を与えてくれる。まずは研修の内容は現雇用者の利益や自身のキャリアのためになるもの、そして自身の好みにあった学習スタイルを選ぶことが求められている。たとえば実習、研究調査、政策や良い実践例の研究。資格取得後コースを受講の場合はそれも認められる。さらに同ガイダンスは、フリーランスのソーシャルワーカーや監査官など他の職種についている人へのPRTLのあり方についても項目を設けてアドバイスしている。

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