日本同様、イギリスでも大規模な保健医療・福祉改革が進んでいる。新しいシステムを構築する試行錯誤の時代にあって、イギリスの取り組みに関心をもつ日本人も少なくない。今は日本にいながら各国の研究所や公立機関などのホームページで最新の情報にアクセスできるが、問題は大量の情報から自分にとって必要なニュースをどう選り分けるか、長文の読書時間をどう見つけるかということだろう。このコーナーでは、イギリスの最新の社会福祉の動きを知る上で、最も重要と思われるニュースを要約して、気軽に読んでもらえるようにしたい。また、関連のホームページを紹介して情報探索の案内に努めるつもりだ。
*矢部久美子…イギリス在住。英国の高齢者福祉問題について取材・執筆活動を行う。著書に「ケアを監視する―英国リポート」(筒井書房)などがある。社会福祉士。
虚弱な成人や児童に対する虐待行為を防ぐためのシステムにはたゆみない改善の努力が必要だ。2006年 2月、虚弱者関連の仕事に携わる人を雇用前に安全かどうか調べ、危険な人が関連の仕事につくことを禁止するための「虚弱グループ保護法案」Safeguarding Vulnerable Groups Billが上程され審議が続いている。
www.publications.parliament.uk/pa/ld200506/ldbills/079/2006079.htm
同法案は、小学校の用務員が女生徒2人を殺害した事件の調査会の勧告
www.bichardinquiry.org.ukにしたがうもので、従来の制度の弱点(児童、成人それぞれに異なる法制度のもとにできた3つのブラックリストの不整合性、警察の情報提供の非一貫性、雇用者のばらばらな対応など)を改善しようとしている。新たな仕組みでは、成人、児童を対象とした2つの緊密に関連したブラックリストが設けられることになる。ブラックリストを決める独立委員会も設置される。
週刊誌コミュニティケアによれば同法案に欠陥があるとして修正しようとする動きもあるという。修正案の1つは直接現金給付を受けて自分でケアワーカーを雇用しているサービスユーザーも雇用者として相手の安全性を必ず調べるようにすること、もう1つは余暇活動やスポーツクラブなどを運営している組織も雇用する相手をブラックリストにのっているかどうか調べることを義務付けようというものだ。
児童サービス従事者開発協議会Children’s Workforce Development Councilwww.cwdcouncil.org.ukは幼児のデイケアや児童センターで働く人たちの質の向上に取り組んでいる。2006年4月、幼児期専門職ステイタス(略称EYPステイタス)の基準案 Early Years Professional Status Standards Consultation Developing を発表した。同案には必要な資格、技能、知識、能力などが規定されており、同ステイタスは教員資格者の身分と同等のものになるという。6月下旬には、基準最終案にそって定めた研修、アセスメントに関する正式な内容が発表される予定だ。また9月から12月の間で、同資格の研修の試験プログラムを試行する。
長期的には、児童サービス労働計画 Children’s Workforce Strategy の一環として、2010年までに、EYPステイタスの職員を、すべての児童センターに配置する。そして2015年までにはデイケアでも同ステイタスの職員を配置するとともに、すべての職員が一定のレベルの資格を持つようにする計画だ。
保健省の全国高齢者ダイレクターが2006年4月下旬に「高齢期への新たな志」A new Ambition for Old Age: Next Steps in Implementing the National Service Framework for Older Peoplewww.dh.gov.ukを発表した。
同書は2001年に発表された10年計画の高齢者サービスフレームワーク(略してNSF)を実施するための今後5年間の計画書で、同フレームワーク実施が第2段階に入ったことを意味する。先に発表されたヘルスケア・コミッションwww.healthcarecommission.org.ukによって行われたNSFレビューの指摘(メンタルヘルスに関して遅れがあるなど)にも対応し、つぎのような10の項目についてプログラムが組まれている。
1、ケアにおける尊厳 2、終末期における尊厳 3、脳卒中サービス 4、転倒と骨の健康 5、高齢期のメンタルヘルス 6、合併症のニーズ 7、救急医療 8、ケア記録 9、健康的な加齢 10、自立、ウェルビーイング、選択