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NO.19

野毛山動物園を歩いてみれば…

 ネーミングライツという言葉を初めて私が聞いたのは、今から3年ほど前のことだ。このとき、あの2002年ワールドカップサッカー大会で決勝戦の舞台ともなった横浜国際総合競技場は日産スタジアムという名称に変更された。スポーツ・文化施設等の名称に、企業名や商品名を入れて収入を得るネーミングライツ(命名権)が導入されたのだ。そのネーミングライツが、今度は野毛山動物園にも導入されようとしている。

 横浜市立野毛山動物園は、横浜の港を見下ろす高台にある。小規模ながら園内には、哺乳類、鳥類、爬虫類など、104種もの動物たちがいる。入園料は無料。誰もが気軽に動物たちとふれあえる憩いの場として、年間50万人もの人が訪れている。昭和26年4月の開園以来、今年3月には入園者5000万人を突破した。これは、横浜市が発表した今年の「横浜10大ニュース」第5位に選ばれるほどの快挙だ。
 その5000万人の中には、もちろん私も含まれている。手元にある、今は亡きインド象のはま子の前で撮った古い集合写真は、小学校の遠足の時のもの。そして、どんぐりの実が二つ。これは30年以上も前、夫との初デートの時に拾ってきたものだ。きっとハマッ子の誰もが、私と同じような思い出を持っていることだろう。
 しかし、その野毛山動物園を維持するためには、年間1億3000万円もの運営経費がかかるという。ネーミングライツ・スポンサー募集の条件は、希望金額が年間5000万円以上、契約期間が5年間以上というもの。この額は単純計算で入園者1人あたり100円の負担となるが、餌代として市民が協力すれば「野毛山動物園」の名称はそのまま残るのだろうか。
 そんなことを考えながら、久々に野毛山動物園を訪ねてみた。ちょうどチンパンジーのコブヘイが、ストローで牛乳を飲んでいた。残念ながらご長寿ライオンのモドリは体調を崩していて会えなかったが、6月に生まれたアミメキリンのハヤテはすくすくと育っているようす。ダイエット中のフンボルトペンギン・テツコの成果は…、微妙。10月にモモタロウを亡くしたばかりのレッサーパンダ舎では、それでもキンタとチップが元気に走り回っている。園内で孔雀とすれ違う。動物との距離が近いのも、この動物園の魅力だ。平日だったので就学前の子どもたちだろうか、みんな楽しそうに動物たちとの時間を共有していた。

 大切なのは、この場所、そしてこの時間だったのだ。野毛山動物園の園内を歩いていると、自然にそんな思いがわいてくる。やっぱり有料化は避けたい。私も愛着ある「野毛山動物園」の名称をなんとか残してほしいと願っていたが、しかし今はたとえ名前が変わっても、この場所に動物たちとの時間を共有できる動物園があってくれればいいと思えてきた。私の思い出は、野毛山のどんぐりとともにあればいい。愛着や思い出よりも大事にしたいものが、ここにはあるのだから。

2007.12│PermaLinkProfile
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