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NO.12

お互いさま 〜たすけあい横須賀の活動より〜

 「なぜ、介護保険の指定居宅サービス事業者にならないのだろう?」 ある研修でその人と知り合ってから、ずっと気になっていた。
 その人は、介護保険制度がスタートするずっと以前の1988年から、神奈川県横須賀市で仲間たちと非営利の相互扶助活動を行っている。入会金(3000円)と年会費(3000円)を支払って会員になるところまでは、ヘルパーを利用する人も、ヘルパーとなって活動をする人も同じ。利用者は1時間1000円の利用料と交通費の実費を支払い、活動者は1時間900円で働くというシンプルなシステムだ。現在の会員数は約300人。そこには、時間外や休日の割り増し料金もなく、要介護認定もケアプランも利用制限もない。

 「『お互いさま』をモットーに、地域の中での相互扶助を、ちょっと組織的に行っているだけ」と、研修で知り合った『たすけあい横須賀』の中田楷子(のりこ)代表。
 「もともと、自分たちの老後を行政だけに任せてはおけないとの思いから、地域のことは地域で、お金ではなく労力による『介護の社会化』を実現しようと始めた活動です。介護保険制度のように大掛かりなものでは、物事が複雑化しますし、お金もかかるので保険料の徴収や多額の税金が必要となる。当初から介護保険制度そのものに『異議あり!』だったのです。
 さらに始まってみると、介護保険制度には、利用者が理解できない複雑さ、要介護認定に要する時間とその必要性、ケアマネジャーの役割、サービス内容等に関する変更の不自由さなど、使い勝手の悪さが目立ちました。法人格を取得し、指定居宅サービス事業者になることで、事務量が増え煩雑になることも避けたかったですしね」
 ―――それにしても、1割の自己負担ですむ介護保険制度の開始によって、会員は減少しなかったのでしょうか?
 「現在の会員は主に利用する人が200人、ヘルパーとして活動している人が100人くらい。介護保険制度の導入当初は思ったほど会員が減りませんでしたが、5年後くらいに新しく入会する人が減り『このまま減少していくのかな』と、少し不安だった時期がありました。でも、昨年の介護保険制度見直し後は、利用限度枠を減らされた人が会員になるケースが増えています。
 運営的には、入会金、年会費と1時間当たり100円の収入で、非営利とはいえ部屋も借りていますし電話代もかかりますから、事務局の4人はほぼボランティア状態。ちょっと厳しいこともありますが…」
 ―――それでも、続けていかれるのですね?
 「はい。ご利用者の話をよく聞いて柔軟に対応することで、介護保険制度の足りないところを補うというニーズは、ますます増えると思います。『たすけあい横須賀』のヘルパーならば、体調が優れないのでもう一時間延長をしたいとか、今日の午後来てほしいという急なニーズにも応えられますし、サービスの内容にも制約がありません。活動する方も高齢化してきているという不安もありますが、これからも、『お互いさま』の精神で非営利の相互扶助活動を続けていきたいと思っています」

 300人もの会員とともに「介護の社会化」を実践されている『たすけあい横須賀』の活動は、道の傍らに咲くタンポポのように、しっかりと地域に根を張っている。
 介護保険を上手に利用することは必要だし、もちろん介護保険をより良い制度にしていくことも大切だが、要介護高齢者の地域での暮らしを支えるには、介護保険という制度からはみ出してしまったニーズを補うサービスも不可欠だ。ただ、非営利の相互扶助活動での運営は大変だろうと気になっていたのだが、「実は、ワイワイ楽しくやってきただけ」と、おっしゃる。
 そうか! ワイワイ楽しい「お互いさま」の精神こそが、20年にもおよぶ活動の原動力だったのだ。

2007.04│PermaLinkProfile
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