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NO.4

いざ! ふれあいショッピング

 姑が入所している特別養護老人ホームから、「ふれあいショッピング」という行事へのお誘いを頂いた。区内の大手スーパーがホームに出店し、菓子類・日用品・衣類などを販売するという。
 姑と買い物をするのは久しぶりだ。この機会に、擦り切れ寸前の室内履きや、傷んできたブラウスなども一緒に選んで買い換えようなどと心積もりをしつつ、勇んで出掛けた。

 姑がそのホームに入所したのは、3年前の夏だった。私たちの住む横浜市では、特別養護老人ホームへの入所順位決定基準が明確化されている。要介護度、介護者の状況、在宅サービスの利用状況に、認知症による問題行動等の特記事項を加えて点数化し、その合計点の高い待機者から順番にお声がかかるのだ。
 当時姑は要介護3だったが、物忘れや失禁などがあり、在宅サービスを駆使して何とか毎日をしのいでいるといった状態だった。介護者としては、先の見えない不安もあった。しかし、いざホーム入所となると、私の心は揺れた。「もう少し、やれるのではないか」とか「やはり在宅のほうが良いのでは」といった思いもフツフツと沸いてくるのだ。正直、世間体だって気になった。
 ところが、もともと「こんなに楽をしていいのかしらねえ」と旅行気分でショートステイを楽しんでいた姑は、何の抵抗も、問題もなくホームに入所をしてしまった。1週間のお試し期間中には、すでに同室のお仲間もでき、「ずっとここにいられるんだって」とすっかりその気になっていたのだ。私はあまりのあっけなさに、力が抜けた。
 その後も姑は、「もっと面会に来て」とか「家に帰りたい」等と、私たちを困らせることもなく、ホームでの暮らしにスーッと馴染んでいる。そこには、ホームに対する先入観や世間体を気にすることのない姑の、自然体で淡々とした暮らしがあった。そして、その暮らしをサポートしていくのが、今の私の役目となった。

 さて、勇んで出掛けた「ふれあいショッピング」だが、結局姑は「この靴はまだ履けるから」と譲らず、きれいな色のブラウスも「派手だわね」の一言で却下した。馴染んだ靴や服に愛着があるのか、もったいない精神の表れか、姑はあまり買い物を好まない。またまた私の勇み足になってしまったが、姑らしい決定に、ちょっとうれしくなった。ホームでは介護するもの、されるものの関係を解かれて、お姑(かあ)さんが戻ってきたようだ。
 「このお菓子、持って帰って食べなさいよ」との言葉も、何年ぶりかで聞くことができた。一緒に食べたみかんが、やけに甘酸っぱかったのは、ハウスみかんのせいばかりではなさそうだ。

2006.08│PermaLinkProfile
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