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NO.3

あんことともに

 「甘いものは、一日に何回くらい食べますか?」と、歯科医院で聞かれ、正直に「4回」と答えた。その途端、歯科衛生士は驚きの声をあげ、医師は苦笑い。そしてほどなく、非難の視線を向けられた。  「でも先生、私はお酒も飲まないし、タバコも吸わないのです。甘いものだけが楽しみで…」と、仰向けに倒された椅子の上から抵抗を試みたが、「甘いものを食べる人は、皆そう言います」とピシャリ。

 甘いもの、特にあんこが大好きだ。朝食は、大概あんぱん、饅頭、大福、どら焼きに最中などのあんこもの。買い置きがないときは、常備しているあんこの缶詰を開け、スプーンですくって食べている。その姿を見た父が、「さすが、俺の娘だな」とポツリと言っていたので、どうやら私のあんこ好きは、DNAの仕業のようだ。そのせいか、昼、晩の食後とおやつも加えて一日4回の甘いものが、何の抵抗もなくスルリと私の胃に納まっていく。
 暑い夏なら水羊羹やくず桜。冷たいゆであずきをアイスクリームと一緒に食べるのも好き。おはぎ、栗蒸し羊羹、桜餅、柏餅など…、私の季節は和菓子屋さんとともに廻ってくる。
 しかも、あんこの素材になる小豆には様々な効用があり、古来薬としても使われてきたそうだ。体内の代謝を活発にするといわれるビタミンB1、B2。イライラを抑える効果が期待できるカルシウム。貧血予防にも必要な鉄分。血中コレステロールを下げるといわれるリノール酸やリノレン酸。もちろん、良質な植物性たんぱく質。特に外皮には、大腸をきれいにする食物繊維やコレステロールの吸収を抑制するサポニンが含まれるという。そういえば、産後には母乳が良く出るようにと牡丹餅を食べる、といった風習も聞いたことがある。残念ながらお産の経験はないが、ここまでくれば私の健康はあんこのおかげと言っても過言ではないような気がしてきた。
 最近、リビングに置いている「笑う門には福来る」の色紙に、「大」の字を付け足した。豆大福で有名な菓子屋の店先で見つけた「笑門来福」の書を真似たのだ。「笑う門には福来る」だった時には、明るく笑っていれば幸せが訪れると自分に言い聞かせて笑顔を作っていたが、「笑う門には福来る」となれば、考えただけでお腹のそこから沸々と笑いがこみ上げてくる。これもやっぱり、あんこ効果だろう。

 しかし、あんこにも弱点はあった。甘いからこその虫歯リスクと体重増加だ。あんこを一生の友とするために、私はあの日、歯科医から決断を迫られたのだ。一日4個の菓子を10年間食べるか、一日1個の菓子を40年間食べ続けるか。
 どちらがいいのかは判っているが、これがなかなか踏み切れない。わかっちゃいるけど、やめられないのだ。こんなに自分に甘いのも、あんこを食べ過ぎたせいだろうか。
 ただ今、あんことともに生きていくためのより良い道を模索中である。

2006.07│PermaLinkProfile
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